如月新一

作家です。著作『あくまでも探偵は』『放課後の帰宅部探偵 学校のジンクスと六色の謎』 読んでる間は楽しくて、読み終わったら何かが残る、面白い小説が好きです。

読書感想文 読むと効く

このお金あれば本が何冊買えるかな、と考えてしまう自分がいる。そう思ってる作家が書く、読めて良かった! 何かに効く! と思えた小説やマンガの読書感想マガジンです。

  • 5本

読み始めたら戻れない『メドゥサ、鏡をごらん』

読書感想文5冊目 『メドゥサ、鏡をごらん』(井上夢人) 夏と言えば、怖い話!……とは、別に思っていないけれど、ホラー漬けの夏であった。 昔はテレビで怖い話の番組をやってくれるから夏と言えばホラーと思っていたけど、最近はそうでもないし、配信でいつでもホラー映画を観られるようになったから、ホラー=夏って感じがあんまりしない。 ホラーが大好きなので、いつでもホラーを楽しめるので私は嬉しい限りである。 ちなみに、能動的ホラーどっぷりだった理由は、ただホラーが好きだからではない。

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繋がる二人の物語『セッちゃん』

読書感想文4冊目 『セッちゃん』(大島智子) 本格的に冬である。歯がガタガタ震え、外で本を読んでいると、手がかじかんでページをめくるのが大変な季節になった。家の中にいても寒い。どてらを着て、こたつの電源入れて、湯呑みでお茶を飲みながら、原稿をもそもそ書いている。 今年のこのマンガがすごい!も発表されて、読みたい本だらけになってきた。原稿を書き、積ん読を消化し、新たな読みたい本を読む。充実している。 だが、これをリア充とは呼ばんのだろう! わかっとるわい!! 寒くなると

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あなたの隣の世界『遠野物語 remix』

読書感想文3冊目 『遠野物語 remix』(京極夏彦・柳田國男) 12月になり寒い季節になってきたが、こういうときに知りたくなるのが怖い話だ。夏にヒヤリとするよりも、冬にゾクリとする方が好きだからである。 2つ上の兄がホラー大好きで、私は小さい頃からホラー映画を一緒に観させられてきたし、兄の買った本を読んでいたので、中学までずっと角川ホラーばかり読んできた。貞子もチャッキーもエイリアンもジャック・ニコルソンも子供の時に味わった。「あなたの知らない世界」を夏休みに観るのが

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ポジティブになんて、なれなくない!『ポジティブなゆり子さん』

読書感想文2冊目 『ポジティブなゆり子さん』(平澤枝里子) 平澤枝里子さんのマンガに出会ったのは、コミティアという同人誌即売会が初めてだった。ひらさわ名義で活動されている、サークル名の「ハッピーエンドマニア」というネーミングや、絵柄が素敵だったので、一冊購入した。 ロボットと人間のお話だったのだが、作者は心を丁寧に描こうとされている方だな、そして切なさや温かさをわかっている人なのだな、と優しさに包まれた。 以降どっぷりハマり、コミティアで同人誌を買いまくり、何度も読み

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『あくまでも探偵は』(講談社リデビュー小説賞受賞作)

第1回『講談社 NOVEL DAYSリデビュー小説賞』のWEB公開改稿執筆になります。重版&シリーズ化決定! 2巻も執筆中です…!

  • 109本

ケーキは食べたらなくなる

 閑古鳥が鳴いていると思っていたら、店に鶴がやってきた。  ドアが開き、若い男の子が現れる。すらっとしていて、綺麗な顔をしていた。モデルや俳優のような、気品や風格を纏っている。 「ひらっしゃいませ」思わず、声が裏返ってしまった。  鶴はにこりと自然な笑みを浮かべて、ショーケースの前まで移動する。腕を組む姿が様になっていた。ここが町のケーキ屋じゃなくて、映画のセットなんじゃないかと感じ、背筋が伸びる。 「ここにお店があるなんて知らなかったなあ」  声がしたので目をやる

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天国エレベーター(初稿−13)

       13  拘束された滑川は動かないが、じっと目を凝らして見ると、わずかに胸が上下しており、呼吸しているのがわかり、ほっとする。 「よかった、生きてる」 「だが、直に死ぬ」  氷のように冷たい口調にはっとして森巣を見る。彼はじっと滑川を、まるで静物を見るような目で眺めていた。もうその目に憎しみの色がないことに、不安になる。 「どういうこと?」 「食堂で話していた女医がいただろ? あいつを呼ぶ」  森巣をナンパしていた人、ではないよな、とうっすら思っていたけ

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天国エレベーター(初稿−12)

       12  僕はこの世からいなくなるのだろか。残された人は平和に暮らせだろうか。僕はいなくなるが、友達は助かった。きっと彼は僕の家族や友人たち、そして困っている人も目にしたら助けてくれるだろう。  勝手に期待を押し付けるな、そうしかめ面をしているのが目に浮かぶ。  これから彼はどうなるのだろうか、彼は人としてどうかしているところもあるから、この先が心配だ。喧嘩もしたし変な奴と関わってしまった。  それでも、僕は彼との時間を楽しんだし、結構気に入っていた。そう思う

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天国エレベーター(初稿−11)

       11  もしもし、と警戒する声が聞こえる。森巣の声だ。 「森巣、僕だ」 「平か、どうした」 「僕が渡した菓子を食べたか?」 「いや、まだだ。お前からもらったものだから、大事にとってある」 「食べてないんだな!」 「食ってない。なんだよ、怒るな。冗談だ」 「それには毒が入ってる、だから絶対に食べるなよ」 「毒? なんの話だ」 「よく聞いてくれ。僕は今、図書室に滑川といる」 「図書室? 三階のか?」 「ああ。僕が入院中に会っていた奴が、実は滑川だったんだ。滑川は

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如月新一のしょうせつ道

小説家如月新一が、小説家になるまでのエッセイです。 脇道多め! ワイルドサイドを行け!

  • 15本

しょうせつ道14(コロナ禍出版編)

ご無沙汰しております、作家の如月新一です。 前回の更新が2019年の5月だった。今は21年の1月だ。 更新頻度が遅すぎでは?? 1年以上、私は何をしてたのか? 講談社のリデビュー賞の受賞報告をしてから、間が空きすぎじゃないか? 小説を書いておりました!『あくまでも探偵は』(講談社タイガ)が1月15日に出版されました! 本当は、「本が出た! やったぜ!!」とただただ喜び、舞を踊って腰を痛めて、普段運動しないんだからやめときゃよかったと唸りながら過ごそうかと思っていたのです

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しょうせつ道14(リデビュー編)

令和元年5月某日、東京都、護国寺駅のそば、講談社22Fの打ち合わせ室で、僕は群林堂の豆大福を食べていた。 大福は手にするとふにゃりとするほど柔らかく、ぱくっと口にすれば、たくさん入った豆がごろごろとしていて食感が楽しい。アンコも大豆の風味が豊かで、噛みしめる度に甘さがお口の中に広がっていく。僕は甘党なので、とても嬉しい。うんまい。うんまい。大きいからとても嬉しい。うんまい。うんまい。 で、何故、僕が講談社で大福をぱくぱく食べていたのか? 「こ、この大福は一体!?」 「講談

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しょうせつ道13(これまでとこれから編)

27年間生きてきた人生を賭けたような小説だった。 勝利を確信していた。 が、結果は、最終選考で落選。 僕は0に戻ってしまった。茫然自失。 かと言うと、その逆だった。 忙しくなっていた。 ・新潮文庫新世代ミステリー賞 → 佳作受賞 ・コルクラボ覆面編集者大賞(2回) → 受賞 ・エブリスタ小説大賞2017 SKYHIGH文庫賞 → 受賞 ・エブリスタ小説大賞2017 マンガボックス原作賞 → 企画進行中? と、ネットに放流した小説はほぼ全て受賞していた。 スカイハイ文

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しょうせつ道12(新作完成編)

新作小説が完成した。 ちょっとミステリー要素もあるけど、ミステリー小説ではない。Sさんのためだけに書いた小説だ。 僕の、今までの人生を全て捧げたような小説だった。違うステージに上がった、という手応えを感じた。自画自賛だけど、最高傑作だと思った。これを書くためには、もう27年生きないと無理だろうと思う。 Sさんだけではなく、これを読んだ人は気持ちが軽くなり、生きやすくなるのではないかと思うような小説を書けた。 食らえ! これが多幸感だ!! という感じ。 するとどうなったか?

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365日小説〜毎日なにかの特別な日〜

毎日、何かの記念日だったりします。 その日の記念日をお題にした、掌編小説集になっております。

  • 13本

『2つの1つ』(11月18日・「雪見だいふくの日」)

「あちゃー」  電車を降りて駅前の駐輪場に行くと、自転車が10台くらいドミノ倒しになっていた。わたしのママチャリも、青いマウンテンバイクの下敷きになって苦しそうにしている。  今日は、散々な一日だ、と顔をしかめる。  ずっと温めていた企画がポシャるし、急な修正仕事が入ってスケジュールが崩れるし、上司は現場のことをわかってる筈なのに新しい仕事を押し付けてきた。  同僚のフォローで謝りに行った帰りに、自転車が倒れてるときたもんだ。良いことがなにもない。けど、最近良いことが

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『鬼のつかの間』(11月17日・「将棋の日」)

 パチン……パチン、と乾いた音がする。  本気で戦っているのに、その音はあまりにも静かで、だからこそ、恐ろしい。 「なんで土曜日なのにやってるわけ?」  狭い部室には長テーブルが並び、制服姿の若者たちが、2人1組、真剣な表情で向かい合っている。 「なんでって、みんな好きだからじゃないの?」 「昔は違ったじゃないか」 「昔からルールは変わらないと思うけど」  そりゃルールは変わらないさ、と思いながら彼らが取り組んでいるものに目を移す。部員10人、男女半々、全員がパチン

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8

『私のエースパイロット』(11月16日・「幼稚園記念日」)

 子供は私じゃない。  私の意思とは無関係の生き物だ。  血を分けたし、お腹の中で育てたのに、生まれてきた子は私ではない。私の中から出て来たのに、私ではない。これはなんだか不思議な気持ちだ。人類の神秘! みたいな話ではなく、変な感じっていう話。  出産するまでヒヤヒヤしたし、出産は手を繋いでいてくれた旦那に「なんか協力してよ!」と初めて怒鳴ってしまうくらい大変だった。  生まれてからも目まぐるしい日々が続く。  特別なアレルギーがないことにはほっとしたけど、夜泣きがす

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10

『僕はかけら』(11月15日・「七五三の日」)

「お前、全部笑ってないな」  壁にかかっている写真を見て、加賀美辰彦はハハッと笑った。  リビングの入ってすぐのところにある、サイドボードの上には電話機が置かれている。電話機の上の小さな壁スペースには、家族の写真がたくさん掛かっている。が、それは当たり前の風景だったので気にかけたことがなかったし、子供の頃の写真なんて改めて見ていなかった。  写真に良い思い出はないから、そうかもしれんなと思いながら、マグカップを持ち、加賀美の隣に移動する。  加賀美はアニメの制作進行を

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映画感想 シネマパラダイス

私は映画が好きだ! 大好きだ!! 映画について語りたい!!! 映画の感想や魅力を伝えたい!!! その熱量だけで語りまくるマガジンです!!!!

  • 8本

それは来るべき現実との戦い『バーバラと心の巨人』

映画感想シネマパラダイスの7本目は 『バーバラと心の巨人』だァー!! みんな、巨人と戦う準備はいいか!? あけましておめでとう。2019年だぜ。『AKIRA』とか『ブレードランナー』の舞台の年さ。こりゃ脳内BGMで、らっせーらーらっせーらーって流れるってもんよ。 ところで、おおみそかはみんな何を観てた? 紅白? ガキ使? 格闘技? やっぱり、年の最後の日ってのは、おもしろいものを観たいって思っちまうよなあ。俺は地元の映画館で、『バーバラと心の巨人』を観ていたよ。 この

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悪いゾンビはおしおき!『ゾンビスクール!』

映画感想シネマパラダイスの6本目は 『ゾンビスクール!』だァー!! もし、大切な人がゾンビになったらどうする?  ためらっちまうようなぁ。食われてやるか、殺して楽にしてやるか、とか葛藤する。引き金を、引けるのか? 俺に!? もし、むかつく奴がゾンビになったらどうする? 俺なら、秒で撃つね。 ゾンビ映画っつうのは、もはやホラーっつうよりもゾンビ映画っていう一つのジャンルだよな。正直さあ、ゾンビが出て来ても、「怖っ!」とは思わないよな。それよりも、歩くの? 走るの? 

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君がいない世界で僕は壊れる『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』

映画感想シネマパラダイスの5本目は 『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』だァー!! 「拝啓、自販機カスタマーサポートへ。 昨日、御社の自販機で嫌なことがあった。正確に伝えたいから、丁寧に書こうと思う。 僕は朝の七時に起きて、朝食を取り、身支度を整え、八時に薬をもらいに病院に向かった。風邪じゃない。持病で月一で通っている。病院に行き、処方箋をもらい、薬局に寄って帰ってくる。それだけのはずだった。これは、病院からの帰り道での出来事だ。 酷く寒かったから、僕は病院を出てしば

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俺たちは友達になれるのか?『ブレックファスト・クラブ』

映画感想シネマパラダイスの4本目は 『ブレックファスト・クラブ』だァー!! 大人になると心が死ぬ、子供の頃はそう思ってなかったかい? なんでかって? 大人はわかってくれなかったからさ。 こいつは何度見ても大号泣映画よ。 この映画は休みの日に、朝イチから補習の呼び出しをくらった高校生5人の物語さ。ガリ勉・スポーツバカ・不思議ちゃん・お姫様・チンピラ、彼らは堅物の先生から「自分とは何か」というお題で作文を書けと言われる。 「自分とは何か」を書けだってさ、まったく大人がや

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