ポジティブなゆり子さん感想

ポジティブになんて、なれなくない!『ポジティブなゆり子さん』

読書感想文2冊目

『ポジティブなゆり子さん』(平澤枝里子)

平澤枝里子さんのマンガに出会ったのは、コミティアという同人誌即売会が初めてだった。ひらさわ名義で活動されている、サークル名の「ハッピーエンドマニア」というネーミングや、絵柄が素敵だったので、一冊購入した。

ロボットと人間のお話だったのだが、作者は心を丁寧に描こうとされている方だな、そして切なさや温かさをわかっている人なのだな、と優しさに包まれた。

以降どっぷりハマり、コミティアで同人誌を買いまくり、何度も読み返している。そんなわけで、私は平澤枝里子さんの商業デビュー作『ポジティブなゆり子さん』という本の発売を首を長くして待っていた。
ワクワクしながら書店で購入し、読み始め、あぁこの平澤ワールドを待っていたのですよと多幸感に包まれた。

さて読書感想文に移ろうと思う。日常生活や恋愛や仕事で嫌なことがあったとき、心がくさくさし、どろっとした気持ちに飲まれてしまいがちになると思う。

ポジティブになりなよ! 悪い考えはやめよう! と簡単に言う人がいる。だが、こっちはわかっちゃいるよ、でもどうやったらポジティブになれるんだ!? 言葉で言うのは簡単だけどさ、なれないから困ってんだよ! と思う。

一体、ポジティブな人はどうやって乗り切ってるんだろう? そんな風に感じたことはないだろうか。
27歳のOL、片山ゆり子さんも日々の生活の中で嫌な思いをする。好きな人が結婚し、仕事でも大失敗をする。だが、「最悪」と思いつつ、からっとした笑顔で乗り切っているので、不思議な気持ちになる。

ゆり子さんが何故ポジティブになれるのか? それは本編で明かされるのだが、家族から優しくされていたからだった。優しさって、励ましてくれるし、幸せにしてくれるよね、という当たり前のことを思い出させてくれた。
家族とのエピソードが神々しいほどで、「あぁ素敵」と胸がときめいてしまう。
ケチをつけたくない。彼女が感じて考えていることを否定してしまうと、なんだか希望を捨ててしまいそうな気持ちになるので、読者として納得したくなる。

本編を読んでいただければわかるのだが、彼女は月を見上げることでポジティブになれる。なんだか自分にでもできそう、と思える解決方法だ。そんな発想できませんよ、と思いつつ、ちょっと真似してみようかな、と思える。

彼女の考えや発言は、変に自己啓発できではないし、嘘くさくない。等身大なのだ。嘘くさくないからこそ、自分ももしかしたら、ゆり子さんのようになれるのでは? と励まされる気持ちになる。この、嘘くさくなさやさりげなさを描けるのも、平澤枝里子さんの腕なのだろう。とてもあざやかである。

同時収録されている、ウサギのミミとサメのジョーの、コンプレックスに向き合いつつ、自分と姿形の異なるものと心を通わせる物語にもぐっとくる。この物語では、欲望と同時に生まれる虚しさと、喜びと同時に生まれる切なさが描かれていた。一見相反する感情が読んだ時、心が揺さぶられ、感動した。

平澤枝里子さんのマンガからは優しさが伝わってくる。優しさは人を励まし、寄り添ってくれる。
嫌なことがあり、くさくさしてしまうのが人の常だろう。でもそんなとき、この本を読むことで、自分もポジティブになろう、と思える素敵なマンガだった。

『ポジティブなゆり子さん』以上ッ!
ではではまたまた


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如月新一
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