『モリス』(講談社リデビュー小説賞受賞作:改稿中)

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3話目修正を始めましょ!

登場人物紹介
如月:リデビュー賞を受賞した作家
河北:講談社タイガの編集長
泉:講談社タイガの編集者
佐渡島:コルクの如月担当編集者

如月:3話目の冒頭(チャプター1〜3)を書いてアップしたので、お手すきの際にご確認くださいまし…!

泉:地の文がめちゃめちゃよくなりましたね! シーン的にそうなりやすい、という部分はあるのでしょうが、全描写に平くんの主観が染み込んでいてするする読めてしまいます。

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100万円ゾンビ(初稿−14)

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 桜木町駅の駅前広場のベンチに座り、ぼーっと人の往来を眺める。もうすっかり夕方なので、当然のことながら、昼過ぎからずっといるのは、僕くらいのものだ。知らない人たちで溢れている。この町には、たくさんの人がいる。大人も子供も、善人も悪人もいる。そして、ぶつかり合いが起こる。僕はできれば、誰も傷つかない町であって欲しいと祈る。

「よお」と森巣が手をあげてやって来た。
「やあ」と僕は返事をする。

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100万円ゾンビ(初稿−13)

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「お金を脅し取るっていうのは、感心できません」

 それで結局、自分の私腹を肥やすのであれば、やってることが僕の考える正しいと思う道とはずれる。

「お金はわかりやすいダメージだってだけなんだよ。やられたことをやり返してやりたかったしね。急に法外な値段を請求される気持ちを味わってもらいたかったんだ」
「それは自分がお金儲けをする理由にはなりませんよ」

 すると、ピエロは、ふっふっふといた

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100万円ゾンビ(初稿−12)

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 僕と彼の間には、見えない壁がある。彼は、透明の壁の存在に気づくと目を剥き、そしておかしいな、とドンドン叩いた。回りこめるのではないか、と壁に触れながら移動してみても、終わりが見えてこない。

 どこまでもどこまで、永遠に見えない壁が続く。
 遠くからでは白塗りの顔に赤いつけ鼻、くらいしかわからなかったけど、目の前に立つと瞼の上から縦に引かれた線や、頬に描かれたハートと右目に涙のマークが見

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100万円ゾンビ(初稿−11)

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 自分の失態を報告するのは辛いものだ。

「逃げられちゃったのは平くんのせいじゃないよ」

 自分の失態を優しく慰められるはとても沁みる。面目ないとはまさにこのことで、恥ずかしくて小此木さんの顔を見れなかった。小此木さんは俯く僕に、「しょうがないって」としきりに声をかけてくれる。

「相手の足が速かったんだよ、切り替えていこう」

 ベンチに戻ってきた選手を励ますコーチや監督のように、小此

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100万円ゾンビ(初稿−10)

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 マスク越しのくぐもった声で、見ず知らずの女性から睨まれながら、「見てた」と言われた。頭脳が猛スピードで回転し、何を? と考えを巡らせる。

 手紙に書かれた「内密にお願い致します」という文面を思い出す。このマスクの女性が、僕が何かを秘密にできるかの見張りなのだろうか?

 警戒しながら立ち止まっていると、女性はマスクを下にずらして笑顔を見せながら、近づいてきた。まだ二十代前半くらいだろう

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100万円ゾンビ(初稿−9)



 僕は口が固い。秘密は守る。だけど念押しで百万円をもらうような秘密はない……はずだ。

「内密にしてほしいみたいですよ」と僕は少し小さな声を発する。
「何を?」
「さあ」それしか言葉がない。

 はっとし、それとなく背後を伺う。僕が何かを秘密を漏らさないか監視している人がいるのではないか、と確認する。飲食スペースは比較的空いてて、テーブル席に五人しかいない。親子三人と、カップル二人だ。

 

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100万円ゾンビ(初稿−8)



 膝の上のボディバッグに入っているのは百万円だが、それが爆弾に思えてきた。ドカンと爆発するのではないか、と気が気ではない。僕はただ、事件に巻き込まれているだけだ。一市民、一高校生の僕が、爆弾をいつまでも抱え、怯えている必要はない。

「警察に行きましょう」

 それが手持ちの駒で唯一指せる手である、というか手持ちに駒なんてないのだから、それしかない。そう思ったのだが、小此木さんは露骨に顔をし

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100万円ゾンビ(初稿−7)



 百万円をくれるだけではパンチが足りないと思ったのか、男はゾンビになって戻って来た。頭の中が、「何故」で埋め尽くされていく。

「何故百万円をくれたの?」「何故戻って来たの?」「何故ゾンビの真似をしているの?」「何故人を襲っているの」「何故襲い続けているの?」

 僕の疑問におかまいなしに、ゾンビは動き回り、通りかかったカップルの男に抱きついた。
 二人の世界に闖入してきたことに腹を立てたの

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明日もがんばります!
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100万円ゾンビ(初稿−5)



 うそうそ、と再び小此木さんが冗談っぽく笑い、そして「そーねー」と腕を組んだ。

「貯金する」
「堅実ですね」
「つまらないって思ったでしょ?」
「店中のパンを買い占めるって言うかと思いましたよ」
「さすがに、そんなに食べきれないよ。五個だけで満足」

 トレイの上に並ぶパンを眺めながら、五個だけで満足、と言っていいのかと苦笑する。五個もあれば満足、の言い間違いではないか。

「貯金はするけ

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