如月新一

小説家。新刊『魔女が全てを壊していった』発売!💫既刊『あくまでも探偵は』シリーズ『放課…

如月新一

小説家。新刊『魔女が全てを壊していった』発売!💫既刊『あくまでも探偵は』シリーズ『放課後の帰宅部探偵』🍩読んでる間は楽しくて読み終わったら何かが残る、面白い小説が好きです。

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  • 日報

  • 『あくまでも探偵は』シリーズのおはなし

    2021年1月15日『あくまでも探偵は」発売 2021年1月24日重版&シリーズ化決定 しかし、あれから一年が過ぎてもまだ、続刊は発売されていない。 チームは今や半分以下。彼らに一体何があったのか、2巻は一体どうなるのか… 二人三脚で走りながら意見をぶつけ合い、取っ組み合い、励まされながら、慰めながら如月は今日も戦う! プロの編集者からの小説アドバイスは、再び読む者全てに納得を届ける。 発売に向けて、がんばれ如月! みんなも応援してあげてくれ! 3月15日に『あくまでも探偵は もう助手はいない』が講談社タイガから無事に発売されるのか!? されるけど!

  • 読書感想文 読むと効く

    このお金あれば本が何冊買えるかな、と考えてしまう自分がいる。そう思ってる作家が書く、読めて良かった! 何かに効く! と思えた小説やマンガの読書感想マガジンです。

  • 如月新一のしょうせつ道

    小説家如月新一が、小説家になるまでのエッセイです。 脇道多め! ワイルドサイドを行け!

  • 365日小説〜毎日なにかの特別な日〜

    毎日、何かの記念日だったりします。 その日の記念日をお題にした、掌編小説集になっております。

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    あくまでも探偵は (講談社タイガ)

    如月 新一
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    放課後の帰宅部探偵 学校のジンクスと六色の謎 (SKYHIGH文庫)

    如月 新一
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    魔女が全てを壊していった (二見ホラー×ミステリ文庫)

    如月 新一

記事一覧

「クビキリ」(初稿-9)

      9  初めて会ったマリンは写真で見るよりも愛嬌のある顔をしていた。青い右目は神秘的だけど、この犬の価値はそんなものではないように思う。  マリンは、…

如月新一
4年前
5

「クビキリ」(初稿-8)

       8  森巣が鼻先まで持ち上げていたティーカップをゆっくり下ろした。 『きれいは汚い、汚いはきれい』人は見かけじゃわからない。森巣はまだ、僕を油断さ…

如月新一
4年前
3

「クビキリ」(初稿-7)

       7  壁に取り付けられている、インターフォンのモニターを見て、殺人鬼が僕を探しにやって来たような戦慄を覚えた。  そこには、柔和な表情の森巣が写っ…

如月新一
4年前
4

「クビキリ」(初稿-6)

       6   詳しく話を聞こうと案内された柳井先生の家は、瀬川さんの家の近所にあるレンガ調をした外壁の、庭とガレージ付き一軒家だった。玄関には観葉植物が…

如月新一
4年前
2

「クビキリ」(初稿-5)

       5 『森巣くんは信じても大丈夫だよね?』  僕の心の声ではない。瀬川さんからの着信だ。  小学校を後にし、思考の迷路に迷い込むように、町を彷徨って…

如月新一
4年前
4

「クビキリ」(初稿-4)

       4  瀬川さんの犬を奪った犯人が逃げ込んだ先は、袋小路だった。  だが、そこに姿はなかったのだと言う。  犯人は煙のように消えたのか? そんな馬鹿…

如月新一
4年前
4
「クビキリ」(初稿-9)

「クビキリ」(初稿-9)

      9

 初めて会ったマリンは写真で見るよりも愛嬌のある顔をしていた。青い右目は神秘的だけど、この犬の価値はそんなものではないように思う。

 マリンは、自分の首が切り落とされるかもしれなかったなんて、夢にも思っていないだろう。僕たちを先導して歩き、時々無邪気な笑顔で振り返る。犬は口を開いていると笑っているように見えて、こちらの頬も緩んでしまう。

「犬は呑気なもんだな」

 リードを握

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「クビキリ」(初稿-8)

「クビキリ」(初稿-8)

       8

 森巣が鼻先まで持ち上げていたティーカップをゆっくり下ろした。

『きれいは汚い、汚いはきれい』人は見かけじゃわからない。森巣はまだ、僕を油断させようとしているのではないか、味方のふりをして欺いているのでは? と額に冷や汗がぶわっと浮かぶのがわかる。

 もう、何を信じていいのかわからない。
 ぐわんぐわんと目眩が起きているようだ。

「お待たせお待たせ」

 リビングの扉が開

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「クビキリ」(初稿-7)

「クビキリ」(初稿-7)

       7

 壁に取り付けられている、インターフォンのモニターを見て、殺人鬼が僕を探しにやって来たような戦慄を覚えた。

 そこには、柔和な表情の森巣が写っている。何故、森巣がここにいるのか。もしかして、瀬川さんに『森巣の知り合いのことをまだ信じない方がいい』と言ったことに怒り、僕を探していたのだろうか?

 隠れても無駄だ、僕がここにいることはお見通しだとでも言うように、再びピンポーンと

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「クビキリ」(初稿-6)

「クビキリ」(初稿-6)

       6 

 詳しく話を聞こうと案内された柳井先生の家は、瀬川さんの家の近所にあるレンガ調をした外壁の、庭とガレージ付き一軒家だった。玄関には観葉植物が置かれ、来客を出迎える大きな油絵が掛かっている。

「どうした、平? ぼーっとつっ立って。ここは職員室じゃないから、遠慮しなくていいんだぞ」

 柳井先生がずいずいと奥のリビングへ向かっていく。そうは言われても、と僕は緊張しながら用意され

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「クビキリ」(初稿-5)

「クビキリ」(初稿-5)

       5

『森巣くんは信じても大丈夫だよね?』

 僕の心の声ではない。瀬川さんからの着信だ。
 小学校を後にし、思考の迷路に迷い込むように、町を彷徨っていたらスマートフォンに瀬川さんからの着信があった。

『違うな、森巣くんの知り合いって信じても大丈夫かな?』

 絞り出された不安そうな声が、スピーカーから耳に届く。

「知り合い? どういうこと?」
「連絡があってね、森巣くんの知り合

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「クビキリ」(初稿-4)

「クビキリ」(初稿-4)

       4

 瀬川さんの犬を奪った犯人が逃げ込んだ先は、袋小路だった。
 だが、そこに姿はなかったのだと言う。

 犯人は煙のように消えたのか? そんな馬鹿な、とこの話を何度聞いても狐につままれたような気持ちになる。

 森巣はどう思っただろう? 面食らっているだろうと顔色を窺う。顎に手をやり、思慮深そうに周囲に視線をやって観察していた。なんとなく、彼の周りの雰囲気がピリッと張り詰めている

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