9 初めて会ったマリンは写真で見るよりも愛嬌のある顔をしていた。青い右目は神秘的だけど、この犬の価値はそんなものではないように思う。 マリンは、…
8 森巣が鼻先まで持ち上げていたティーカップをゆっくり下ろした。 『きれいは汚い、汚いはきれい』人は見かけじゃわからない。森巣はまだ、僕を油断さ…
7 壁に取り付けられている、インターフォンのモニターを見て、殺人鬼が僕を探しにやって来たような戦慄を覚えた。 そこには、柔和な表情の森巣が写っ…
6 詳しく話を聞こうと案内された柳井先生の家は、瀬川さんの家の近所にあるレンガ調をした外壁の、庭とガレージ付き一軒家だった。玄関には観葉植物が…
5 『森巣くんは信じても大丈夫だよね?』 僕の心の声ではない。瀬川さんからの着信だ。 小学校を後にし、思考の迷路に迷い込むように、町を彷徨って…
4 瀬川さんの犬を奪った犯人が逃げ込んだ先は、袋小路だった。 だが、そこに姿はなかったのだと言う。 犯人は煙のように消えたのか? そんな馬鹿…