如月新一
~ 文化祭を楽しめなかった全ての人へ 最高の文化祭をご用意しました ~ 私立苺原高校の文化祭では3つの事件が起こっている。 ① 「文化祭をジャックした」という声明文が出され、あちこちで事件が発生。図書室の探偵がジャックを追う。 ② 脅迫されたミスコン候補の女生徒に危険が迫り、風紀委員の男子がボディガードに。 ③「文化祭を十三回繰り返しているから助けて欲しい」 文化祭嫌いの文化祭実行委員の男子は、時間を繰り返す幼馴染を文化祭を終わらせるために奔走する。 3つの事件が解決するとき、文化祭の真実が明らかになる。 創作大賞2024 #ミステリー小説部門 応募作品です。お楽しみいただけましたら、応援よろしくお願いいたします! ご感想、お待ちしております…!
2021年1月15日『あくまでも探偵は」発売 2021年1月24日重版&シリーズ化決定 しかし、あれから一年が過ぎてもまだ、続刊は発売されていない。 チームは今や半分以下。彼らに一体何があったのか、2巻は一体どうなるのか… 二人三脚で走りながら意見をぶつけ合い、取っ組み合い、励まされながら、慰めながら如月は今日も戦う! プロの編集者からの小説アドバイスは、再び読む者全てに納得を届ける。 発売に向けて、がんばれ如月! みんなも応援してあげてくれ! 3月15日に『あくまでも探偵は もう助手はいない』が講談社タイガから無事に発売されるのか!? されるけど!
このお金あれば本が何冊買えるかな、と考えてしまう自分がいる。そう思ってる作家が書く、読めて良かった! 何かに効く! と思えた小説やマンガの読書感想マガジンです。
小説家如月新一が、小説家になるまでのエッセイです。 脇道多め! ワイルドサイドを行け!
9 初めて会ったマリンは写真で見るよりも愛嬌のある顔をしていた。青い右目は神秘的だけど、この犬の価値はそんなものではないように思う。 マリンは、自分の首が切り落とされるかもしれなかったなんて、夢にも思っていないだろう。僕たちを先導して歩き、時々無邪気な笑顔で振り返る。犬は口を開いていると笑っているように見えて、こちらの頬も緩んでしまう。 「犬は呑気なもんだな」 リードを握る森巣が、尻尾を振って歩く犬を苛ついた顔で見ている。人格者で、みんなの人気者の森
8 森巣が鼻先まで持ち上げていたティーカップをゆっくり下ろした。 『きれいは汚い、汚いはきれい』人は見かけじゃわからない。森巣はまだ、僕を油断させようとしているのではないか、味方のふりをして欺いているのでは? と額に冷や汗がぶわっと浮かぶのがわかる。 もう、何を信じていいのかわからない。 ぐわんぐわんと目眩が起きているようだ。 「お待たせお待たせ」 リビングの扉が開き、柳井先生が戻ってくる。さすが先生と言うべきか、生徒二人の間に漂う剣呑な雰囲気
7 壁に取り付けられている、インターフォンのモニターを見て、殺人鬼が僕を探しにやって来たような戦慄を覚えた。 そこには、柔和な表情の森巣が写っている。何故、森巣がここにいるのか。もしかして、瀬川さんに『森巣の知り合いのことをまだ信じない方がいい』と言ったことに怒り、僕を探していたのだろうか? 隠れても無駄だ、僕がここにいることはお見通しだとでも言うように、再びピンポーンと音が鳴る。 柳井先生が通話ボタンを押し、「はい、柳井です」と返事をする。
6 詳しく話を聞こうと案内された柳井先生の家は、瀬川さんの家の近所にあるレンガ調をした外壁の、庭とガレージ付き一軒家だった。玄関には観葉植物が置かれ、来客を出迎える大きな油絵が掛かっている。 「どうした、平? ぼーっとつっ立って。ここは職員室じゃないから、遠慮しなくていいんだぞ」 柳井先生がずいずいと奥のリビングへ向かっていく。そうは言われても、と僕は緊張しながら用意されたスリッパに履き替えて、柳井先生に続く。 廊下を抜け、天井の高い広々としたリ
5 『森巣くんは信じても大丈夫だよね?』 僕の心の声ではない。瀬川さんからの着信だ。 小学校を後にし、思考の迷路に迷い込むように、町を彷徨っていたらスマートフォンに瀬川さんからの着信があった。 『違うな、森巣くんの知り合いって信じても大丈夫かな?』 絞り出された不安そうな声が、スピーカーから耳に届く。 「知り合い? どういうこと?」 「連絡があってね、森巣くんの知り合いが犬探しを手伝ってくれるらしくて。でね、賞金を五十万円にすれば、依頼として引き
4 瀬川さんの犬を奪った犯人が逃げ込んだ先は、袋小路だった。 だが、そこに姿はなかったのだと言う。 犯人は煙のように消えたのか? そんな馬鹿な、とこの話を何度聞いても狐につままれたような気持ちになる。 森巣はどう思っただろう? 面食らっているだろうと顔色を窺う。顎に手をやり、思慮深そうに周囲に視線をやって観察していた。なんとなく、彼の周りの雰囲気がピリッと張り詰めているように感じ、声をかけることに躊躇する。 「瀬川、犬は抵抗しなかったのかい?」