『モリス』(講談社リデビュー小説賞受賞作:改稿中)

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クビキリ(2稿-3)



 傍に立っている男子生徒を見て、思わず息を呑んだ。

 彼の白と黒が印象的だった。傷やにきび跡の一つもない白い肌、そして対照的な濡れ羽色をした柔らかそうな髪をしている。僕を見下ろす彼と視線がぶつかる。切れ長の二重瞼をしていて、冷たくも温かくもある印象を受けた。同情するように目を細め、安心を誘うような笑みを浮かべる。

 中性的な顔立ちなのだが、精悍な男らしさがある。イケメンと言うには言葉が安

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お読みいただき、ありがとうございます!

「クビキリ」(2稿-2)



 十六歳、高校二年生の僕は犬を探している。探しているのは白い中型犬だ。家に帰り、犬が尻尾を振りながら駆け寄って来たら嬉しいだろう。家族が待っているというのは良いことだ。

 だけど、僕は犬を、新しい家族を探しているというわけではない。
 そもそも探しているのは他所の犬だ。

「すいません、すいません」

 校門のそばに立ち、下校する生徒たちに声をかけながら紙を差し出して行く。

『名前はマリ

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明日もがんばります!

「クビキリ」(2稿-1)



「殴られたことはあるか?」

 十六年感の人生を回想しながら、「ない」と僕は答える。

 子供の頃に父と母は離婚していて、父親から殴られたことはない。大らかな母親は僕を打ってしつけをしたことがないし、悪さをしないから先生の体罰を受けたこともない。

 弱そうに見えるからいじめられかけたこともあるが、無視をするとか仲間はずれにするとか、嫌がらせをされるという感じだ。殴られはしない。

「本当の

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