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「クビキリ」(2稿-1)

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「殴られたことはあるか?」

 十六年感の人生を回想しながら、「ない」と僕は答える。

 子供の頃に父と母は離婚していて、父親から殴られたことはない。大らかな母親は僕を打ってしつけをしたことがないし、悪さをしないから先生の体罰を受けたこともない。

 弱そうに見えるからいじめられかけたこともあるが、無視をするとか仲間はずれにするとか、嫌がらせをされるという感じだ。殴られはしない。

「本当の自分になりたいんなら、死を感じることだ。手始めに痛みを知っておけ」

 そう言われ、右の頬を殴られた。口の中が切れ、鉄に似たしょっぱい血の味が広がった。痛みに頭が痺れ、視界と共に脳が揺れる。何が起きたのかわからない恐怖と共に、何をするんだ、という怒りが巻き起こる。なんなんだ、一体。

「今日、自分が死ぬかもしれないと思うんだ」

 混乱しながら、頭にあった言葉を掴んで投げる。

「……は、悪い奴なのか?」口の中が切れているから、呂律が回らず、ちゃんと喋れない。
「いいか? 人間は元々、悪だ」

 僕はどうすればいい?
 決断を迫れるときには時間がない。カウントダウンもされない。いざという時に、動けるかどうかだ。周りを観察しろ、頭よ働け、体よ動け、と力を込める。

 彼の言う通り、人間が悪であるとしても、自分の正しさを見失うわけにはいかない。

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作家です。著作『放課後の帰宅部探偵 学校のジンクスと六色の謎』 読んでる間は楽しくて、読み終わったら何かが残る、面白い小説が好きです。 http://papermoon.gloomy.jp/index.html

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