もしかして、この地球で生きてない方がいいんじゃない?
俺の名前は如月新一。
適度のご近所づきあいをする小説家です。
日中ずっと家にいて出かけないし、あの人何してんだろって思われてるんだろうなってちょっとだけ気にしている小説家でもある。
お父ちゃんが長野から横浜にちょっとだけ戻って来ていて、葡萄をたくさんくれたので、近所の大家さんとこの前カレーをくれたお向かいさんにおすそ分けした。
お向かいさんの奥方と犬ちゃんが出てきて歓迎をしてくれた。
犬ちゃんを撫ぜつつ、「カレー辛くて美味しかったですー、ご馳走さまです」とお礼を伝えつつ、俺の技術では落としきれなかった頑固な汚れのついたままのタッパーをお返し。
奥方「カレー美味しかった? 辛くなかった?」
私「辛かったけど美味しかったです」
奥方「辛くなかった?」
私「辛かったけど、美味しかったですよ」
奥方「辛かったでしょ。わたしは辛くて食べれなかったの」
私「…ええ、ちょっと辛かったです。けど、美味しかったです」
犬「わんわん!」
……確かに、辛かったね。美味しかったけど、辛いか辛くないかで言えば辛かったし、辛すぎないか辛すぎじゃないかで言えば、辛すぎた。
な、犬?
犬「わんわん!」
夕方、そのままお隣さんにも葡萄をおすそ分けを試みたんだけど、留守だった。
それはいいとして、家の前が薮で蚊がめっちゃいて、ちょっと待ってる間に「襲われてる」っていう表現がしっくりくるくらい蚊にやられた。
蚊なあ、100歩譲って血を吸うのは認めるけどさ、血を吸われた後にかゆくなるのとぷうんっていう羽音が許せない。それに伝染病とかも媒介するじゃん?
蚊って、もしかして、この地球で生きてない方がいいんじゃない?
みんな、いいかい? 選民思想はよくないよ。
この世界で、いらない命なんてないんだよ。
生き物に優劣はないんだ。
傷つけていい相手なんていないんだよ。
よくない言葉を言う前に、一度深呼吸をして考えてみよう。拳を振り上げてしまったら、その後のことを想像してみよう。
失った命は、もう取り戻せないんだ。
争いのない世界、暴力のない世界、命が奪われることのない、悲しみのない世界を、一緒に作ろう。
だからみんなで、カプセルを飲んでジャックインして、統合思念体で一緒になろう。
な、犬?
犬「わんわん!」
…蚊は百歩譲って良いとしてよお、コバエホイホイを置いてるけどコバエがディスプレイの周りをちらちら飛んでて鬱陶しいったらないぜ。
「コバエ 生きていい理由」検索。
…あんまないな。
やるか。な、犬?
犬「ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン!!!!!」
蚊は生きていてもいい、コバエはそうでもない。
カボチャのお菓子は美味しい。
今日はこれを覚えて帰ってください。
本日閉店