ブレックファストクラブ感想

俺たちは友達になれるのか?『ブレックファスト・クラブ』

映画感想シネマパラダイスの4本目は

『ブレックファスト・クラブ』だァー!!

大人になると心が死ぬ、子供の頃はそう思ってなかったかい? なんでかって? 大人はわかってくれなかったからさ。

こいつは何度見ても大号泣映画よ。

この映画は休みの日に、朝イチから補習の呼び出しをくらった高校生5人の物語さ。ガリ勉・スポーツバカ・不思議ちゃん・お姫様・チンピラ、彼らは堅物の先生から「自分とは何か」というお題で作文を書けと言われる。

「自分とは何か」を書けだってさ、まったく大人がやらせそうなことだよな。自己分析ってやつか?

先生は職員室に戻ると、生徒たちはやってらんねえぜって感じでだらけ始める。でも、みんな初対面だし趣味も違う。口喧嘩の始まりさ。チンピラがスポーツバカをからかい、スポーツバカが「お前はそうやってふざけて、自分を守ろうとしてるんだろ?」とか言い合うわけ。

チンピラ黙って真面目に作文書けよ、と始めの内は思うわけよ。いらっとしちまう。でもな、昼飯時になってみんなが飯を食うときに、チンピラだけ弁当がないんだよ。なんかやべえ気がしてくる。

チンピラが周りの奴らの家族をバカにしてるけど、チンピラの家族はどうか?

チンピラの家は荒んでいる。親父とお袋が罵り合い、チンピラの腕には葉巻の根性焼きがある。親父にやられてんのさ。

おいおいヘビーじゃねえか、とこっちは不安になる。なあ、お前らもそう思うだろ? と他の面子の顔を見ると、うっすらとした同情なわけ。もしくは信じてない。

なんか、やべえ予感がしないか?

こっちは、ふと気になるわけよ。チンピラが補習に呼ばれた理由はわかる。でも、他のメンバーはなんで補習に呼ばれたの? ってな。

彼らは先生という共通の敵に対して共闘する。教室を抜け出してみたり、隠れてマリファナを吸ってみたりして、先生への反抗という共犯行為で絆が深まっていく。

そうすると、口喧嘩をしているときに、つい自分のことを喋っちまう。自分の家庭や補習に来た理由についてなんかをな。

不思議ちゃんは家族から無視され、お姫様は周囲からのプレッシャーに参っている。

なかでも、強いエピソードなのはスポーツバカが補習に来た理由さ。こいつは、レスリング部のチームメイトにいじめをやっちまった。その理由はなぜか?

「親父のためにやったのさ」

親父は「自分が若い頃は悪さしたもんだ」とよく話していた。自分もなにかしないと親父に失望されるんじゃないかと思って、他人をいじめちまった。そして、いじめた相手の親と会って、自分はなんてことをしちまったんだ、相手の親は惨めな気持ちだろうな、と激しく後悔する。

「この家に負け犬の居場所はないと言われている。
いっそ怪我をして再起不能になりたい」

泣きながらそんなことを言うんだぜ。こっちもボロボロ泣いちまうよ。子供になんてもんを背負わせてるんだと思うし、わかるぜお前の逃げたくなる気持ちや親を憎む気持ち、と肩にそっと手を置いてやりたくなる。
だけどこの映画はそれだけじゃない。みんなが同情しあうんじゃあないんだ。俺の方が辛いねって言わんばかりに、互いのことを傷つけ合うのさ。

「あなたにはこのプレッシャーは耐えられないでしょうね」「僕のことを下に見てるのか?」「お前の家は恵まれている。そのピアスも買ってもらったんだろ?」「黙ってよ!」「お前はお姫様だけど俺は0だ!」「俺が消えたってなんとも思わないだろ」

視聴者側としても、キャラクターだとしか思ってなかった存在に、血が通っていくのを見ると、「あっこいつも生きている人間なんだな」と認識できて、はっとする。
心を開きまくり、ノーガードの殴り合いよ。この映画で傷つけ合えるってことは、距離が近いってことでもあるのさ。本来であれば、学校ですれ違うだけの彼らが、近づいている証拠かもしれない。「俺たちも親みたいになるのかな?」「嫌だ!」そんなことを言い合える関係になる。

仲良くなったかな? 秘密を話せる友達ができてよかったじゃないか、そう思った頃にガリ勉がミサイルを撃ち込む。

「月曜日になったら、僕たちどうなるの?」

なんて質問をするんだ。
今日は友達、でも、月曜日学校で会ってもまだ友達? そういう質問なのさ。これに対して、お姫様の答えは「無視するわ」だ。痛烈だ。スクールカーストってのが邪魔をする。この軋轢、見ていて辛いぜ。

ガリ勉と不思議ちゃんは、自分は挨拶をすると言う。そして、ガリ勉が自殺未遂をした所為でここに来たのだ、と語る。でも、それがちょっとした笑い話にもなり、5人が月曜日でも友達でいようと誓う。

そうしてラストに、ガリ勉が「先生は色眼鏡で僕たちを見ている。自分がなにかなんて書かせるのはバカげている」という書き出しで、それでも、自分たちは「ガリ勉・スポーツバカ・不思議ちゃん・お姫様・チンピラ」だと作文に書く。大人につまらない見られ方をしていても構わないぜ、という確かな自己肯定なのさ。俺たちのことは、俺たちが知ってるってな。

彼らはちゃんと、月曜日に会っても友達でいられるだろうか?
現実のしがらみは厳しいさ。でも、俺は信じたいね。

互いに泣きながら傷つけあい、歩み寄る。カーストや家庭は違うけど、人は他者に寄りそおうとすることはできるんだ。その姿が美しくて、ぼろぼろ泣いちまった。

でも、この映画が絶妙なバランスなのは、先生と用務員の会話シーンなんだ。先生が「最近の生徒は生意気になってる」と言うと、用務員が「自分が16のとき、教師をどう思ってた?」と尋ねるのさ。
先生も昔は、自分だけは堅物にはならないと思ってたはずだぜ。
これは、画面のこっち側に対しても言ってるわけよ。お前、大人になって心が死んじゃってないか? ってな。

『ブレックファスト・クラブ』以上ッ!

ではではまたまた

【ジョン・ヒューズ監督のおすすめ他作品】
『すてきな片想い』(1984)
『フェリスはある朝突然に 』(1986)
『ホームアローン1〜3』(1990〜1998)と『フラバー』(1997)の脚本もやってるよ!

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