しょうせつ道10(迷走編)
ある日の仕事中、僕はそれに気がついて逡巡した。
最後に感動したのはいつだ?
小説を読んでも漫画を読んでも映画を見ても音楽を聴いても感動していない。
感情が動いていない。
ボツになってからも、小説を書くことはできた。新作短編も書いた。
書けるけど、楽しくない。感動しない。
コミュニケーションが上手く取れていなかったせいで、4年間編集さんと積み重ねてきたと思っていたものがぽしゃったときのダメージは大きかった。
小説を書くことに全てを賭けていた。
なのに、楽しくない。人生が楽しくない。
じゃあ、なんのために僕は生きてるんだ?
無感動期に突入している、と気がついた時には、冷や汗が止まらなかった。動悸が激しくなった。
このままではまずい。
そう思った僕は、昼休みに文房具屋へダッシュして、スケッチブックを買った。
とにかく、なにか「楽しい」を探したかった。
僕は高校の時に美術部にいて石膏デッサンもやってたし、(先輩からエレキギター習ったりしてたけど)友達に漫画描く人が多い。
自分も漫画を描けばいいのではないか? これも巡り合わせなのでは? と思った。漫画家になりたい、というわけではないけど、楽しさを探した。
幸い、僕は絵が下手だから、だんだん上手くなって行くのはなんだか楽しかった。
2016年 12月
僕は背景美塾(漫画の教室。とっても勉強になった!)の初級コースにいた。クリスタと液タブを買い、漫画を描いていた。
白状すると、このとき偶然、漫画家の中川いさみ先生も一緒に受講していて、『中川いさみのマンガ家再入門』に僕も登場している。背景の描き方とかパースとか勉強している。
(http://www.moae.jp/comic/mangakarestart/35)電子書籍買おう!
最終日の後、受講生たちでお疲れ様会をした。そのとき、LINEを交換し、僕はみんなの漫画を読みたかったから、自分の小説のHPを晒した。(誰も自分の読ませてくれなかったけど)
その中の1人が、いたく僕の小説を気に入ってくれた。
「小説家になりなよ。向いてるよ」
彼女は、そんなようなことを言ってくれた。
僕は答えた。
「嫌だああああああ」
つづく
ではではまたまた