『モリス』(講談社リデビュー小説賞受賞作:改稿中)

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天国エレベーター(初稿−10)

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 僕のことを追い詰めていると言った男が、僕に勝負を申し出て来た。怪訝に思いながら睨んでいると、「そう怖い顔をしなくても」と笑い、「負けたら死ぬだけだよ」と不穏な言葉を続けた。

 滑川はコンビニ袋を覗き、中から二つ地元銘菓を取り出し、テーブルの上に置いた。プレーン味の白い袋とチョコレート味の茶色い袋のものだ。

「一個食べたら、電話を一度だけ電話をかけさせてあげよう」
「電話?

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明日もがんばります!
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天国エレベーター(初稿−9)

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 僕の質問を受け、花坂さんが喉に補声器を当てる。

「何者、とは?」
「質問を変えますよ。僕がここに来た時、電話をしてましたよね」
「ええ。誰もいなかったので。ルール違反はまずかったですね」

「いえ、僕が気にしてるのはそこじゃありません。右手に電話を、左手にペンを持っていた。机の上にはメモをした跡がある。右手と左手が埋まっているのに、あなたはどうやって話してたんですか?」

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天国エレベーター(初稿−8)

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 明日の今頃、僕は何をしているだろうか。いや、森巣は何をしているだろうか。

 町に巣喰う悪の親玉、親玉を狙う別の悪党の諍いに、高校生である森巣と僕は巻き込まれている。しかも、森巣を巻き込んでしまったのは僕だ。失敗すれば、僕のように骨を折られる、だけでは済まないだろう。

 森巣が戦うのは彼の意思だ、だから僕は好きにしろと言った。

「どうしてそういうことを言うんだ」

 夕飯

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天国エレベーター(初稿−7)

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「僕の紙袋が何も盗まれないで返された。結果的に何が起こったのかわかった」
「何が起こったんだ? 困ったから俺を呼んだか?」
「その通り。僕が君に相談をして、呼び出すことが目的だったんだよ」
「だろうな。理学療法士の格好をして、盗みに行ったのかもな。病院にいそうな格好をしていたら、関係者だと思い込むもんだ」

 軽口で返事をしたのかなと思ったけど、森巣の表情は真剣そのものになっ

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天国エレベーター(初稿−6)

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 私物をまとめた袋がない。どこにやってしまったかな、とうろうろしてみるが、見当たらない。

 清掃の人が間違えて持って行った? いや、まさか、中には少女漫画と地元銘菓が入っているからゴミだと思われるはずがない。それに、ベッドのそばにあるゴミ箱には鼻をかんで捨てたティッシュが入っているのが見えるから、清掃はなかったはずだ。

 隣のベッドのカーテンが今日も開いている。つるんと禿げ

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天国エレベーター(初稿−5)

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 僕に向けられている二枚のカードを見つめる。人生は選択の連続だ。軽はずみに引いたらババ、ということもあり得る。滑川かキノコ男か、よく考えなくても、どっちもババじゃないか。昨日、迂闊な提案をしてしまったと反省する。森巣を止めるべきか、それとも協力して成功する確率を上げるべきか。他に手はあるのか。

「ちょっと、悩みすぎじゃない? 早く決めてよ」

 向かいの席に座る海老原少年が、

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天国エレベーター(初稿−4)

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 パグに似たおじさんは、「私です、八木橋(やぎはし)です。覚えてますか?」と言いながら、僕らのいるテーブルの脇に立った。パグではなくヤギ、と頭の中で修正しながら、ヤギのマスクを被って強盗をするという事件に関係していたことが紐づけられる。

「ああ、覚えてる」

 森巣が猫を被っていないので、おや、と感じたが、八木橋さん相手に推理を披露したことがあり、あの時もこのモードだったなと思

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天国エレベーター(初稿−3)

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 頑張ることを「骨を折る」とは言うけど、実際頑張るのは骨を折った後だな、と思う。食堂の空いている席に移動して、痛む右腕を庇いながら移動するのは苦労する。迂闊に摂食しようものなら、その場でもんどり打つほどまだ痛い。

「なんだこれは?」

 注文してきたものが運ばれて来て、森巣が眉をひそめる。

「何って、パフェだよ」

 テーブルの上には、オレンジジュースと花弁を想起させる器

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天国エレベーター(初稿−2)

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「私たちもう帰るけどさ、優介何か困ってることない?」
「実は腕の骨が折れちゃって」
「あら、そうだったの?」

 母親が視線を移し、ギブスで固定された僕の右腕を見るとわざとらしく目を見開いた。

「ホントだ、折れてる。静海、知ってた?」
「二人とも、そういうのいいから。持ってきて欲しいものはないの?」

 持ってきて欲しいもの、と唱えながら考える。入院してもう三日経ち、退屈して

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天国エレベーター(初稿−1)

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 森巣良とは何者なのか?

 良い奴なのか、悪い奴なのか、頼りになるのか信じてはいけないのか、友達なのかただの同級生なのか、白なのか黒なのか。魅力的だけど意図が掴めないジャンル不明の音楽に出会ったようで、考えてもわからずに困惑する。

 僕は彼と出会って事件に巻き込まれ、調査をし、いくつかの真実を暴いた。行動を共にすることに慣れ始めて忘れかけていたが、僕の生活は犯罪だとか事件だとかそ

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